個性化

紅茶を入れるティーポットがありますが、あれを見ていて思ったことがあります。まず、我々が知っている紅茶を飲むには、それなりの時間がかかります。カフェなどでは、既にカップに注がれた紅茶が出てきます。(ティーポットつきのカフェも増えましたが)

個性化とティーポットの関係

つまり我々が知る紅茶は既に出来上がった紅茶ということになります。これは、喫茶店などで出てくる、ティーカップに注がれた紅茶を想像していただければと思います。

しかし、当然ながら紅茶になる前には、茶葉だったわけです。茶葉の段階では、確かに紅茶であることはわかっても、それを見たからといっても、紅茶を目の前にしたという感覚にはなりません。茶葉には、紅茶らしくなっていく過程があるわけなのです。

紅茶の葉っぱが個性化していくかのよう

まず、ティーポットに、茶葉を入れ、お湯を注いでしばらく蒸らします。

この際、茶葉はジャンピングという現象を起こしているらしいです。茶葉が、ティーポットの中で、まさにジャンプしているかのように動いているそうです。白い陶磁器のティーポットではその様子は観察できませんので、この現象を確認するには、ふたを開けてみるか、透明なティーポットを使うなどしなくてはなりません。

また、市販の紅茶を見ていても、案外ジャンピングの様子が観察できます。よくお茶の入れ方がおいしいとか、そうでないとか言いますが、しっかりジャンピングが起きていることがおいしい淹れ方のコツになっているのかもしれません。もちろんその他の要素として、温度や茶葉の量なども影響するのだと思いますが。

そして、一段落すると、茶葉は沈殿し、紅茶が抽出されてくるわけなのです。

私はこの過程に非常に興味を感じました。ティーポットの中で何が起きていたかというと、紅茶が益々紅茶らしくなっていこうとしていたと感じたのです。

これは私が、カウンセリングを行っているから感じたことだと思うのですが、カウンセリングには、その人らしさを深めていく時間と言える面があると考えています。

茶葉がまったく別なものに変化してしまうわけではないように、カウンセリングを受けた時も、何かが修正されるというイメージではなく、その人らしさが深まった、その人らしい生き方を見つけたなどと言うほうが本質に近いわけです。

持ち味、などという言葉を出すこともありますが、茶葉にすれば、まさに持ち味を抽出したのでしょう。

適応と個性化

広い意味でとれば、その人らしくなっていくことを、専門的には個性化と呼んで良いかと思いますが、ティーポットを見ていてこんなことを感じたことがあったのです。またこの個性化という言葉は、ユングが提唱したとも聞いています。

カウンセリングの目的を考えると、適応ということを挙げたくなりますが、実は、個性化という方が近いのではないかと思っています。少なくとも適応のプロセスやその方法はそれぞれの形を取っていくものと感じています。ある一つの方向性を誰しもが目指すというものでもなく、そこには個別性が存在しています。