無意味綴り

日常では使用しない言葉ですが、心理学の世界では無意味綴りという言葉が時折登場します。特に、記憶や学習に関する実験を行う際には頻出する用語です。

無意味綴りとは、言葉が示す通り、意味のない数字や文字の羅列です。例えば、

「あじさ」

このような無意味な文字のことを言います。どのような時にこうした無意味綴りが心理学実験で用いられるのでしょう。

無意味綴りの存在意義

記憶に関する測定をする場合、それは単純なことのようで、非常に難しい問題が混ざっています。

例えば松戸市に住む30代、成人男性の記憶力を測定しようという研究を考えたとします。そして、50名の成人男性に調査協力を得て、実験を開始します。

記憶力の指標として、難しそうな10個の英単語を提示して、その後、復唱してもらうという課題を提示したとします。このことで、人は10個提示された場合、何個程度英単語を記憶しているかについての平均値を測定しようとします。

しかし、この結果を分析しても、松戸在住30代男性の記憶力を測定したことにはならないのです。難しい英単語とはいっても、これまでの人生の中で目にしてきた可能性は十分に考えられますし、また男性の中には英語が得意であったり、仕事で実際に使用している可能性もあるわけです。

また、職種によって、馴染みの深い単語もあるでしょうから、偶然提示された単語の中に、何人かの方にとって覚えやすい単語が多く含まれている可能性もあります。これでは正確なデータが得られなくなってしまいます。調査に協力してくれた人の元々の英単語に関する条件を一致させることはほぼ不可能なのです。

このような場合、無意味綴りが用いられます。誰も見たこともない、無意味な文字の列挙であれば、条件を統制することができます。

そこで英単語ではなく、「ひぬぎ」とか、「ぐわま」ばどの意味をなさない文字を用います。かなりの個人差はこうしてカットすることができます。

しかし、無意味綴りであってさえも、何らかの有意味な反応をすることが知られています。そこで、より無意味綴りに対する正確な定義をするために、有意味度という数値を求める、記述するなどします。

例えば、「あびか」という無意味綴りがあったとしてら、その反応には地域差が出現する可能性が考えられます。柏の人であれば、どことなく我孫子を連想するでしょう。そのため割と覚えやすい無意味綴りと化してしまいます。

レポート化する際、どのくらいの有意味度をもった無意味綴りで調査を行ったか記されていれば、その結果の妥当性についても読み手側としては検討する材料を得られるわけなのです。